「聴く」ことが、なぜ子どもの可能性を引き出すのか – 黒澤 義巳(武庫川女子大学・神戸親和女子大学 非常勤講師)

Bookmark this on Google Bookmarks
Pocket
LINEで送る

2018年1月、タイ国バンコクにおいて「あなたが変われば、子どもが変わる‼」と題した教育講演会を開催する黒澤 義巳さん。黒澤さんは、武庫川女子大学および神戸親和女子大学の非常勤講師を務めるかたわら、教育と研修の研究実践機関「フェニックスオフィス」を運営し、教育相談や講演活動、子どもたちの教育指導などをおこなう教育者でもあります。

バンコクでの(そして海外での!)初講演をひかえた黒澤さんにお話を伺いました。

子どもは、親よりも能力が高いんです。そして、教師よりも高い。やる気になった子どもの成長はすごいですよ

講演会 講師:黒澤 義巳さん(フェニックスオフィス)

兵庫県をベースに、日本各地で講演活動をおこなう黒澤さん。元は兵庫県立高校で22年間、数学の教師をしていました。またバレーボール部の顧問として、西近畿大会ベスト4などの指導実績も残しています。教職をリタイアしてからは「より幅広く子どもたちの指導を」との思いから、さまざまな活動をされています。

そのひとつが「web塾」。小学生から高校生までを対象に「オンライン授業」を展開しています。

最近では、企業や老人会での講演依頼など、さまざまなチャネルで講演する機会が増えていると黒澤さんはいいます。

「いま本当に大切だと思うのは、子どもの指導だけでなく、保護者のサポートだと思います。企業からいただく講演依頼の内容から感じるのは、求められている人材の変化です。企業がいま悩んでいるのは、採用した社員の一定数が、すぐに辞めてしまうこと。定着率を上げるためにはどうしたらよいのか、どの企業も試行錯誤をしています」

受験や進学のためだけでなく、社会に出るために必要な学び、いま社会ではどんな力が必要とされているか、を考えることが大切なのだそうです。

「離職率が高いひとつの原因として、より自分自身を知り、自身の興味ある分野にあった会社を選ぶということができていないのではないか。好きなことができる仕事だったら、がんばれるじゃないですか。子ども自身が、自分の興味ある分野へ進んでゆくとき、保護者の理解とサポートは非常に重要な要素になってきます」

黒澤さんが指導をしてきた中で、好きなこと、興味あることに取り組んでいる子どもが、想像以上の結果を出したケースをたくさん見てきたそうです。

「やる気になったときの子どもの能力ってすごいですよ。 ある日、小学生の頃から知っている明治学院大学3年生の男子が、相談にきました。彼は経営学部に入学したんですが『医者になりたい』という。とうぜん文系ですから、理系の授業なんかやってきていないわけです。転部するだけでもハードルが高いのに、そのあと医者になれるかどうか。聞いたところでは、医学部転部生の9割程度がドロップアウトしているそうです。しかし、それでも、彼はやりたいと言いました。私は、早くても2年はかかるだろうなと思ったんですが、1年でみごと医学部に入りました。心からやりたいという気持ちが、子どもの能力を引き出すんですね」

他人ひとに思いを話すことで、自分の心に気づくことってあるんですね

黒澤さんが、長年にわたり子どもたちの指導をとおして気づいたことは「聴くこと」の大切さでした。

「ぼくはね、『話し上手は一流、聴き上手は超一流』と思っています。高校教師を20年以上、そして在野での学習指導を同じくらい経験してきたので、じつにさまざまな子どもたちを見てきました。たんに勉強ができれば良いわけじゃないですよね。やはりオトナになるにつれて『自我の成長』とのバランスをとることがとても大切なんです。ある程度年齢がいくとね、教えられるとウザいじゃないですか(笑) だから、質問するんですね。『◯◯は、これについてどう思う?』って」

黒澤 義巳さん著書】ただの先生ちゃうねん黒澤義巳やねん: あなたが変われば子どもは変わる

教育現場での「質問」には、「答えがひとつだけの質問」と「答えがそれぞれの人の数だけある質問」があるという。

「答えが一つの問題は、TeachとStudyでいいんですよ。でも、世の中の多くの課題は、答えが人によって違うじゃないですか。そういう問題については、CoachとLearnが必要なんですね。その教育現場で必要なことは、「問いかけ」と「聴くこと」です。先に申し上げた『保護者の方のサポートが重要』っていうのは、ここがミソなんですね。親が子どもの話を聴いてあげる。するとね、子どもだけじゃなくて、親も自分の気づかなかった子どもの気持ちや考えにハッとすることがあるんですよ。自分の顔を見るためには鏡が必要でしょう。それと同じように、自分の心を見るためには、心の鏡がいるわけです。相手の『話を聴くこと』が、心の鏡って訳です。実は、『聴く』ってとても必要な作業なんです」

子どもが自分の道をみつけ、そこを目指せるようになるために、大人はどうすべきか。黒澤さんの講演は、そこにテーマがあります。

「これはね、ぼく自身の経験から言えることなんですけども。子どもをね、自分の思い通りに変えようとしても、ぜったいに無理なんですよ。『こうしなきゃだめだ』って言われても、そうはしないのが人間です。なぜかって、子どもも大人も、人間には『自我』があるからです。自分を振り返ってみてください。子どもに『夢を持て』といいつつ、自分は夢を持つことを忘れていたりしませんか。ぼくがバレーボール部の顧問をしていたときに、そこにハッと気づいたんです。それから、相手を変えるんじゃなくて、まず自分を変えるっていうことを実践してみた。まず自分が夢をもつようにしてみたんです。その夢に向かって進んでいくところをみて、子どもたちもだんだんと、少しずつ自分の目指したいところを意識するようになったんでしょうね。子どもの親だけでなく、世の中の指導者と呼ばれる人たちみんなに伝えたいことです。まず自分が変わること。それで世の中は変わりますよ」


黒澤さんの講演では、大人が変わることで子どもも変わっていった実例を聞くことができます。講演会詳細はこちら

 

著者

atsushi tamura
atsushi tamura
田村 篤(たむら あつし)。1978年午年生まれ。長野県佐久市出身。 2003年よりタイ国バンコクに移住。教育や子育てのフィールドを専門に事業活動をおこなう。2012年、海外での子育てを応援するフリーマガジン「ニコラボ」を創刊。海外教育コンサルタント。バンコク生まれの一女の父。