【夢をおいかける大人インタビュー!】作編曲家・サックス奏者 小林 洋平さん(39)

小林 洋平さんの仕事
作編曲家・サックス奏者
Composer, Arranger, Saxophonist

小林 洋平こばやし ようへいさん 1978年生まれ、神奈川県葉山町出身。葉山町立南郷中学校、神奈川県立横須賀高等学校、東京理科大学理工学部物理学科卒。同大学院中退。大学では宇宙物理学研究室に所属。研究者への道を模索するも、「音楽」への想いを諦めきれず、バークリー音楽大学映画音楽科に留学。首席卒業後、プロの作曲家・編曲家としてキャリアを切り開く。サックス奏者としての活動の他、ドラマや番組テーマ、CMなどのサウンドトラックを手がける。代表作は「国際報道」(NHK, 2014-2017)、映画「繕い裁つ人」(2015年、ギャガ)ほか。

聞き手:ニコ

「作編曲家・サックス奏者」って、どんな仕事?

まず、「サックス奏者」のほうなら、なんとなくわかるね! 楽器のサックスを吹く人、だよね。じゃあ、「作編曲家」ってなんだろう? 分解すると「作曲家」と「編曲家」のふたつになるんだって! すると「作曲家」は、「曲・音楽を作る人」っていう意味だよね。「編曲家」ってなんだろう? 「編曲家」の意味を調べてみると、「作曲家のつくったメロディーに伴奏をつける人」のことなんだって。つまり、音楽をきれいに聞こえるように整える人ってことかな? それって、どんな仕事なんだろう? 今回は、TV番組や映画音楽で活躍する、小林 洋平さんに話を聞いてみたよ!

インタビュー日時:2017年9月某日
場所:東京・三軒茶屋

ニコ 洋平さん、はじめまして! 今日は、音楽の仕事について教えてください!

洋平さん はい、よろしくお願いします。

ニコ まず、「作編曲家」っていう仕事がよくわからなかったんだけど、どんなことをしてるんですか?

洋平さん ぼくが今までにやってきた仕事を見てもらうとわかりやすいかもしれないですね。ここ最近の仕事でいうと、NHKの「国際報道 2017」という番組の中でつかわれる音楽や、2015年に公開された中谷美紀さん主演の「繕い裁つ人」という映画の音楽を作っています。TVや映画、CMなどで使われる音楽を作る人、というのがぼくの仕事のひとつですね。

ニコ ほえー! じゃあ、ぼくがよく見ているテレビ番組とかでも、洋平さんの作った音楽を聞いているかもしれないんですね!

洋平さん そうだね。最近は、コンサートのアレンジや、ディズニーの曲アレンジを手がけたりもしているから、大人から子どもまで、いろんな場面でぼくの作った曲を聞く機会はあるかもしれませんね。

 

ニコ 洋平さんは、子どもの頃から、いまの仕事をやりたいと思っていたんですか?

洋平さん ぼくが子どものころに熱中していたのは、じつは「宇宙」なんです。たしかNHKスペシャルっていう番組だったと思うんだけど、アインシュタインが出てくる宇宙の番組をやっていて。当時はビデオテープに録画して、何度も擦り切れるまでくりかえし見たんです。だから、大学では「宇宙物理学」の研究室に入って宇宙の研究をしていたんですよ。

ニコ ええ!? 音楽じゃなくて、宇宙物理学? なんか、ぜんぜん正反対な感じですね…

洋平さん そうかな? ぼくの中では、どちらも地続きの、似た感覚なんだけどね。

ニコ どうして宇宙がおもしろいと思ったんですか?

洋平さん ぼくは、幼稚園生のころから「死ぬこと」が怖くて、いつも泣いてる子だったんだよね。おじいちゃんも、ずっとおじいちゃんのままでいられる訳じゃないって、そういうことがとっても怖かった。だから、何万光年もある宇宙のことを知れば、死ぬことが怖くなくなるんじゃないかなって、そう思ったことがあったんです。

ニコ ふーん…

洋平さん でも、実は宇宙よりももっと気になっていたのが「音楽」。ぼくの父は普通のサラリーマンだったんだけど、文化とか食への感性がとても高いひとだった。当時はまだマイナーな指揮者のレコードを買って「この人はいずれ有名になるから」って。実際、その指揮者はいまとっても売れている人なんだよね。そして、母はピアノの先生をやっていたひと。ぼくに対して音楽の英才教育はいっさいやらなかったけど、家にピアノがあったから小さい頃から自然と触れていたんだよね。そういう環境におおきな影響を受けたんだと思う。大学進学を考えた時、はじめは音大か芸大を希望していたんです。

ニコ 子どもの頃から、本当にいいもの、本物の音楽に触れる機会があったってことですか?

洋平さん たぶん、それはとても大きかったと思う。父も母も、音楽だけじゃなくて、日常で食べるものや触れるものはなるべく「本物」に触れさせたいって、とっても大切にしていたから。

ニコ でも、どうして大学は宇宙物理学にいったの?

洋平さん 音楽と同じくらい宇宙が大好きだったのはもちろんだけど、音大進学はとにかく父が大反対したから 笑。「音楽の道になんか進んで、どうやって食っていくんだ」って。

ニコ そうなんだ… それで大学は宇宙物理学を選んだんだね。

洋平さん でも、どうしても諦めきれなかったんだよね。大学を卒業し、大学院に入った後に、「なんとか音楽の道に進む方法はないのか」って探したんです。どうせやるなら、両親に納得してもらえる結果が必要だと思った。そこで世界中で活躍する音楽家を輩出している「バークリー音楽大学」を受けることにしたんです。

ニコ その大学を出ると、音楽の仕事ができるの?

洋平さん  バークリー音楽大学は、商業音楽のプロフェッショナルを養成する世界一の学校といっていいと思います。そこで学んだ人が、いま世界中のさまざまな音楽シーンで大活躍している。卒業すればかならずプロになれる訳ではないけれど、この大学に行くことことで、音楽のプロフェッショナルへの道を切り拓くきっかけになると思ったんですね。

ニコ すごい! その大学を受けるために、現地に行ったんですか?

洋平さん バークリー音楽大学は、世界中の才能を獲得するために、各地で奨学金の試験を行なっているんです。ぼくも、日本で試験を受けて、奨学金特待生としての合格通知を受け取りました。

ニコ それを、お父さんとお母さんに見せたんですか?

洋平さん そう。父は、それでも反対したんです。でも、ぼくが高校生で音大受験をあきらめたときに母に宣言していたことがあったんですよ。「いまは、音楽ではなく、自分の選んだ道として宇宙物理の道をいく。勉強もがんばって、4年間で成績も結果をしっかりと残す。それでも音楽の衝動をおさえきれなかったら、そのときは止めないで」って。

ニコ すごい… それくらい、音楽がやりたかったんだ。

洋平さん その約束があったからですかね。バークリー音楽大学への留学を両親につたえたとき、最初に味方してくれて、父を説得してくれたのは母でした。「あの子にとって、音楽を取り上げるってことは、死ねって言ってることと同じなんですからね!」って。

ニコ それで、お父さんも納得してくれたんだ。

洋平さん いまでは本当にだれよりも父が応援してくれて、大きな仕事をやるたびに、だれよりも喜んでくれている。こんなに嬉しいことはないよね。バークリー音楽大学は学費も高額なんですが、奨学金でカバーできるってわかったことも、納得する大きな理由だったと思います。

ニコ そっかぁ。お父さんやお母さんが納得するような結果を出すっていうことも、大切なんですね。

洋平さん 音楽だけじゃないと思いますが、仕事って「心の温度」で作るものが違うと思うんです。小手先だけで作っているものと、たましいを削って作るものって、やっぱり違うんですよ。とくに、現代は音楽が大量消費されていく社会です。デジタル技術が進化して、だれでも音楽が作れるようになって、淘汰されていくものがたくさんある。人生とおなじで、自分でつくっていくものですから。自分の納得できる道に進むことを大切にしたいですね。

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夢を追い続ける中で、ひょっとしたら親に反対されることもあるかもしれません。そんな時、すぐにあきらめてしまうのか、それとも頑張って夢へ続く道を探し続けるのか。本気で取り組めば、きっと道は開けてくるでしょう。そしてそれが「心の温度」へと繋がり、「良い仕事」ができるようになっていくのですね。

(安藤 理智)


◆企画協力: 学習空間ノア

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