【夢をおいかける大人インタビュー!】今月の夢を追いかけるオトナは? フィジカルトレーナー 金三津 龍人さん(25)

金三津さんの仕事「フィジカルトレーナー(ARMY UNITED FC所属)」

金三津 龍人かねみつ りゅうとさん タイプロフットボールチーム「ARMY UNITED FC」所属のフィジカルトレーナー。1992年生まれ。富山県出身。カンボジアのフットボールアカデミーGFA Soriya で約2年間、海外でのサッカースクール運営に携わり、カンボジア代表チームのトレーナーとしても同行。現在は、タイ国陸軍が運営するプロフットボールチームにおける唯一の日本人スタッフとして、選手の体調管理、リハビリメニューの指導や障害予防などをサポートしている。

聞き手:ニコ

フィジカルトレーナーって、どんな仕事?
みんなは「フィジカルトレーナー」っていう仕事、聞いたことありますか? 業界によっては「アスレチックトレーナー」という呼び方をすることもあるみたい。サッカーをはじめとしたプロスポーツの世界では、選手の体調管理や怪我のリハビリ、予防のためのトレーニングなどを専門におこなう職業のことを、フィジカルトレーナーと呼ぶんだって。金三津さんは、そのフィジカルトレーナーとして、タイのプロサッカーチームで働いている日本人のひとり。プロのプレーヤーじゃなくて、プロのトレーナーとしてサッカーの仕事を海外でやっているって、とっても珍しいよね! どうやったらなれるのかな? さっそく話を聞いてみよう!

インタビュー日時:2017年6月某日

ニコ 金三津 龍人さん、「フィジカルトレーナー」って、どんな仕事をしているのか、ぜんぜん想像がつきません…  教えてください!

龍人さん 僕は、ARMY UNITED FC というタイのプロサッカーチームで働いています。チームはタイの2部リーグでたくさんの強豪チームと競っていて、所属している選手は約30名ほど。ほとんど毎日、練習があって、週末には試合があります。この練習や試合のときに、選手たちの身体の調子をケアするのがフィジカルトレーナーの仕事です。

ニコ 身体のケア?

龍人さん そう。たとえば、練習前に各選手が気になっている部分にテーピングを巻いてあげたり、マッサージで身体をほぐしたり。選手たちが最良の状態で練習や試合にのぞんで、100%の力を出せる状態をつくる。それがフィジカルトレーナーがいちばん大切にしていることです。

ニコ なるほど! じゃ、選手がケガをしたときも、龍人さんが診るんですね!

龍人さん いや、それが実はちょっと違うんです。チームには、専属のチームドクターという医師がついているので、ケガをした場合は、そのドクターがまず診療をするんですね。で、そのあとが僕の仕事。たとえば、そのケガをした状態でどの程度の練習ができるかを、選手の状態をみながら相談しアドバイスする。また、そのケガが悪化しないためのテーピング処置をしたり、はやく治るためのリハビリトレーニングを組んだりする。そんな感じで選手をサポートするために、それぞれの専門分野ごとにチームで仕事をしているんです。

ニコ ほー! サッカーチームには、選手以外にもそんな仕事をする人がいたんですね!

龍人さん 僕がいま所属しているARMY UNITED FCというチームは、名前のとおりタイの陸軍が運営しているプロチームです。チームマネージャーをふくむ上層部は、ぜんぶ陸軍所属の軍人です。現場では、コーチから下のポジションが外部からの人材で構成されています。選手の中にも数名、タイ陸軍所属のメンバーがいますね。

ニコ え? 軍隊のサッカーチームなんですか?

龍人さん 正確には、タイ陸軍が経営している、といったほうがいいのかな。練習や試合をするピッチも、ディンデーン地区にあるタイ陸軍訓練施設のなかにあるんですよ。

ニコ ええ? なんだかすごい環境で仕事をしてるんですね…

龍人さん たまに、となりの敷地から射撃訓練の銃声が聞こえたりすると、さすがにびっくりするよね(笑)

ニコ あわわ…(汗)

龍人さん 軍隊のチームだからといって、仕事がとっても厳しいかというと、そういうわけでもないんです。むしろ、タイらしく自由なところもあって。それに、やっぱり陸軍関係者が運営しているので、民間企業のような利益と効率を追求したチームの運営体制が確立しているわけじゃないんです。そういった部分でも、自分の能力や経験が活かせるんじゃないかな、と感じています。

ニコ じゃ、選手の身体をケアする以外の仕事もあるんですか?

龍人さん 外国人として仕事をさせてもらっているので、僕にしかできないポジションでチームに貢献したいと思っています。チームのマネージャーやスタッフはあまり英語が得意じゃないんですね。しかし、チームには僕をふくめ、ブラジル人、スロバキア人などの外国人選手がすくなからず在籍しています。そういった選手たちと、チーム運営スタッフとの間に立って、かんたんなタイ語と英語の通訳をすることもあります。身体の調子が良いだけではダメで、きちんとチームでコミュニケーションを維持しないと、選手として結果を残すことは難しいですからね。

ニコ ふわー、なるほど。龍人さんも、やっぱりサッカーをやっていたんですか?

龍人さん もちろんです! 幼稚園の頃からサッカーをやっていて、高校生の頃は、やっぱりプロの選手になりたいと思っていました。でも、あるときに「プロスポーツの世界には、トレーナーという仕事もある」ということを聞いたんですね。僕の母は、看護師の仕事をしていたので、医療方面の仕事には子どもの頃から興味を持っていました。もしかしたら、サッカーの選手にはなれなくても、トレーナーとしてサッカーを仕事にできるかも、と思ったんです。

ニコ じゃ、高校を卒業してすぐこの仕事を見つけたんですか?

龍人さん いえ、さすがに何の経験もなかったから、自分にしかできないことを身に付けたいと思ったんです。そこで、鍼灸の専門学校に行きました。

ニコ 鍼灸? それってなんですか?

龍人さん いわゆる「鍼(はり)治療」のことですね。トレーナーとしてプロ選手をみるためには、身体のことは勉強しておかないといけないだろうと思ったんです。それに、サッカーのトレーナーで鍼灸の国家資格を持っているって聞いたら、ちょっとすごい感じがしませんか?(笑)

ニコ うん、すごいです!

龍人さん タイでは、ほかのサッカー先進国ほどには、トレーナーという職業の評価がまだまだ高くないんですね。また選手にとっても、ケガの予防やリハビリトレーニングなどに対する意識が低いんです。そういう環境の中で実績を残していくためには、コミュニケーションをとにかく絶やさず、すこしずつ周りの意識を変えていく努力をつづけることが、何よりも大切なんだと思います。

 

「アラジン」の魔法のことば :学習空間NOAHのアラジンこと安藤理智先生に聞いてみたよ!

スポーツが好きな人は「プロスポーツ選手になりたい」と思ったことが一度ぐらいはあるでしょう。しかし、実際のプロスポーツは選手だけで成り立っているわけではありません。監督やコーチ、チームスタッフをはじめ、多くの人たちが関わっています。そうやって考えると「スポーツに関わる仕事」はたくさんあります。将来、自分の好きなスポーツに関われると楽しいですね。(安藤 理智)


◆企画協力: 学習空間ノア

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